May 06, 2019

ソー&ロキ:ブラッド・ブラザーズ(ロバート・ロディほか)

奸智の神ロキが雷神ソーを倒してアスガルドの支配者になった時、見えてくるもの・・・ロバート・ロディとエサッド・リビッチが、マーベル・コミックスの代表的悪役ロキの視点でアスガルドの物語を描いた作品。
ヒーロー漫画と思えない視点に行き着く展開が興味深い。これまでのロキとソーの扱われ方に自分が持っていた違和感を著者も共有している。従来の視点が当然視されているかの如き前半から、様々な登場人物の言動とロキの独白によって、それが徐々に崩れ、もう一つの視点があぶり出されていく。ラストは複雑な気分にさせられる。これは大人の物語だ。

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ジブリの教科書 3 となりのトトロ

ジブリ映画の解説・解釈書である「ジブリの教科書」シリーズの一冊。『となりのトトロ』について、宮崎監督はじめ美術の男鹿和雄ら関係者の解説や、半藤一利ら様々な分野の人々による自分なりの感想や解釈を掲載している。
興味深いのは関係者の解説だ。監督の考え方だけでなく、裏方として支えてきた美術や録音演出のこだわりや裏話を読むと、『トトロ』を観直して、それらを確かめたくなった。 一方、各界の人々の感想や解釈は、そんな見方もあったのかと楽しめるのもあれば、こじつけすぎに感じられたり単に感嘆詞の羅列だったり、その質に個人差が大きいのが残念だ。

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戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊(モリー・グプティル・マニング)

2次大戦中、ナチスの焚書に対し、アメリカの図書館員、出版業界と軍が戦地の兵隊に本を送り続けた史実の全貌を描くモリー・グプティル・マニングによるノンフィクション。
傑作だ。本が好きで何度も本の力に助けられている自分にとって、こんな実話が戦時中にあったのが驚きで、それが知られていない事もまた驚きである。
敢えて欠点を指摘するなら、日本への空襲や原爆投下について僅かに触れているその書き方に、日本人犠牲者への配慮が欠けているように感じられるところか。
とにかく、こんな事を国家を挙げてやってのけたとは、アメリカすごいっす。

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あなたが世界のためにできるたったひとつのこと 〈効果的な利他主義〉のすすめ(ピーター・シンガー)

世界をより良い方向に進めるための考え方と行動として、欧米の若者らに注目される「効果的な利他主義」を、その理論的支柱である哲学者、ピーター・シンガーが紹介する書。
寄付等の善意による行動の効果については、前から自分も気になっていた。自分と似た考えをする人がこんなにいて、自分より効果的に実践しているのが知れて実に興味深い。
ただ、邦題が本書の内容にそぐわないのが残念だ。効果の観点で利他主義を考察する本書は、世界のためにできる「たったひとつのこと」ではなく、「最も効果的なこと」などとすべきだと思う。

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水鏡推理(松岡 圭祐)

文科省の非キャリア公務員・瑞希は研究費不正使用を調査するチームに配属され、組織の枠をものともせず抜群の推理力と正義感を発揮して活躍する。『万能鑑定士Q』や『探偵の探偵』の作者、松岡圭祐の新シリーズ。
松岡作品らしい博学(雑学?)にいつもながら感心させられる。ただ、それが度を越して盛り込まれて1冊の中で駆け出し主人公が不正使用を簡単に何件も暴きまくる。ここまでやると主人公の優秀さが強調されるより、作品世界の退廃ぶりと他の人物の無能ぶりが不自然だ。読みやすい勧善懲悪の物語で、良くも悪くも子ども向け漫画のような作品である。

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アルティメッツ  2(マーク・ミラーほか)

ヒーロー・チーム「アルティメッツ」は政府の下でイラク問題に介入。メンバーを苦しめる様々な問題の裏には或る陰謀が。別世界の「アベンジャーズ」を描いた作品の2巻。
現実の国際問題を取り込み、メンバー間に政治的態度の違いで反目が生じる等の展開は自分好みだが、1巻に続き本作もハルクとジャイアントマンの扱いが酷い一方、キャプテン・アメリカやアイアンマンに甘いのが頂けない。その上、1巻より登場人物が増えたせいもあってか、各人物(特に敵役)のエピソードの掘り下げ方も弱くて物足りなかった。政治問題を取り上げている割には中途半端で、エンターテイメントとしても分かりにくくて読後感が悪い残念な一冊だ。

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探偵の鑑定 Ⅱ(松岡 圭祐)

 松岡圭祐の人気シリーズ『探偵の探偵』と『万能鑑定士Q』のクロスオーバー作品。『水鏡推理』の水鏡瑞希と『特等添乗員α』の浅倉彩奈も登場する。
 豪華な顔触れ、スリリングで派手な展開、気持ちのいい終わり方で自分としては満足できた。ただ、『探偵』ファンとしては玲奈より須磨が活躍してるのが少し残念。一方、『鑑定士』ファンの読者は銃弾が飛び交う本作のハードな雰囲気に馴染めず、小笠原の扱いに不満のようだが、性格的に小笠原みたいな人が苦手な自分は気にならなかった。
 いずれ『水鏡推理』シリーズも読んでみたいと思う。

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May 04, 2019

メキシコ麻薬戦争:アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱(ヨアン・グリロ)

メキシコの麻薬取引の実態やそれに伴う暴力の問題を明らかにする、ヨアン・グリロによるルポ。
本書を読むまで、メキシコがここまで作り話みたいな凄惨な事件が続発してる戦慄すべき事態に陥ってるとは知らなかった。危険な取材に取り組んだ著者に敬意を表したい。社会問題において一度もつれた糸をほぐしてくことの難しさを痛感する。

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ブラックウォーター 世界最強の傭兵企業(ジェレミー・スケイヒル)

民間軍事会社ブラックウォーターの実態について、調査報道ジャーナリストのジェレミー・スケイヒルが明らかにし、『NYタイムズ』年間ベストセラーになった本。
中身は濃く、写真もなければ余白も少ない約500ページ。読み応えありだが、人によっては耐えられないか。
気になったのは、構成が分かりにくい事である。恐らく本書が指摘しているのは、軍事の外注化、その法規制の不備、キリスト教保守派の問題が中心だが、文章があちこちに飛んで論理的に整理された形で頭に入りにくい。
いずれにしろ、これだけ綿密な調査報道をしてくれた著者と、それを翻訳してくれた訳者に敬意を表したい。

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どうしても嫌いな人 すーちゃんの決心(益田 ミリ)

独身女性、すーちゃんの職場には、どうしても嫌いな人が・・・女性の平凡な日常を描かせたら天下一品の漫画家、益田ミリの代表作「すーちゃん」シリーズの一冊。
男性が読んでも「分かる。分かる」と共感する。自分にも「どうしても嫌いな人」がいて、すーちゃんと同じように色々思う。そんな人に振り回されず生きたいものだが。

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