February 03, 2019

キサラギ

売れないアイドル、如月ミキが不審な死を遂げてから1年後、ファンサイトで出会った5人(小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅、香川照之)が1周忌のために初めて集まった。ミキは殺されたのだと1人が言い始めたことから、5人での様々な推理が始まる。
『ALWAYS 三丁目の夕日』の古沢良太の脚本を佐藤祐市が映画化した密室劇。
素晴らしい。面白い。巧妙に伏線が張られた驚きのどんでん返し続きのミステリーでありつつ、中だるみなく随所に笑いを散りばめ、しかも、最後は温かい余韻を味わえる。脚本の秀逸さは、全く驚きだ。豪華俳優陣の個性際立つ演技も楽しい。特に常になく苦虫噛み潰したシリアスさを見せるユースケと怪しいオヤジぶりを発揮する香川の2人は、大いに見応えありだ。
本作をノーチェックだった自分は、とある人から「面白いらしい」と聞いて観た。これほどの秀作でありながらマスコミで殆ど採り上げられないことに、『檸檬のころ』でも感じた不思議さを覚えた。日本のマスコミは映画を評価する目がまるでないらしい。とにかく、本作は滅茶苦茶に面白い。痛快に笑えまくる一押しの映画だ。

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January 26, 2019

300

都市国家スパルタにぺルシア帝国による侵略の危機が訪れていた。買収された神託のせいで国家としての戦争を拒否されたレオニダス王(ジェラルド・バトラー)は、300名の精鋭だけで100万のペルシア軍に戦いを挑む。
『バットマン ダークナイト・リターンズ』や『シン・シティ』で知られるアメコミ界の巨匠、フランク・ミラーの原作を基に、『ドーン・オブ・ザ・デッド』のザック・スナイダー監督がペルシア戦争のテルモピュライの戦いを描いた作品。
やらなくてよかった事が多く、やってほしかった事が足りなかった。悪役のペルシア側を醜く描きすぎている。不気味な不死部隊や象の登場はいいが、処刑人の両腕が甲殻類の刃になっているのは滑稽なだけだ。あれでは殆ど『北斗の拳』の世界である。いつペルシア兵が「ひでぶ!」と言い出すかと思った。
一方、息を抜ける笑いはない。更に残念なのが、究極の戦闘場面を期待すべき映画にもかかわらず衝撃的な場面がない事だ。確かに勇猛果敢に戦っているが、『マッハ!』や『バットマン』シリーズの様に観客が「おぉっ!」と思わず声を漏らす気の利いた場面がない。最後の投げ槍も、あれだけ引っ張られるとレオニダスが何をするつもりか予想がつき、「それで外すなよ」と突っ込みたくなる。
暴力に溢れた平板なマッチョ映画で、フランク・ミラーらしいハードボイルドな魅力には欠ける残念な作品だった。

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January 11, 2019

スモーキン・エース

ラスベガスのマフィア、エース(ジェレミー・ピヴェン)の心臓に100万ドルの賞金がかけられたことをFBIのメスナー(ライアン・レイノルズ)らは突き止める。FBI、そして、サイクス(アリシア・キーズ)ら多くの殺し屋が動き出した。
『パルプ・フィクション』のタランティーノに次ぐ才能とも言われるジョー・カーナハン監督のクライム・アクション映画。
がっかりだ。冒頭、登場人物が多すぎて関係がつかめず、話の展開についていけない。漸く分かり始めて、個性的な殺し屋達の活躍を楽しみ始めて暫くすると、それが思いの外、大した活躍もしないまま消えていく。最後に考えもしなかったどんでん返しは確かに来る。だが、全然面白くない。
タランティーノが得意とするこの類の犯罪群像劇は、無茶苦茶な登場人物と激烈な暴力描写を軽快に笑い飛ばせるのが、本来の味だ。頭を使ったり、妙に深刻になってはいけない。しかし、本作は観客の自分の脳味噌が足りないのか性格に問題があるのか、展開が時々分からなくなるし、最後にFBIのメスナーが相棒を失って感情的になり公益を無視する場面が不愉快でならない。それぞれが特徴的な殺し屋も結局は人物設定の面白さだけで終わり、映画の中で活かしきれていないため、結局は大して印象に残らなかった。
一流のエンターテイメントを目指しつつ、定まらない散漫さで、最後に深刻ぶって終わる痛快とは程遠い映画だ。

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September 08, 2018

檸檬のころ

高3の秋元(榮倉奈々)は東京の大学に進学しようと決めている。そして、彼女を想う野球部の二人、佐々木(柄本佑)と西(石田法嗣)。一方、音楽ライターを目指している白田(谷村美月)は、或る日、同じ様に音楽を感じている軽音楽部の辻本(林直次郎)と言葉を交わし、彼が初めて作った曲の作詞を頼まれた。
豊島ミホ原作の青春小説を、本作が長編映画第1作目となる岩田ユキが脚本・監督を務めて映画化した作品。
傑作だ。泣きそうになった。高校時代を思い出した。そこらのテレビドラマや映画の様に作りすぎた展開でなしに、ままならない日常の中にこそあるドラマと、その奥で揺れ動く感情が、静かに瑞々しく描かれている。
主演の榮倉奈々は、同時期に公開された映画『僕は妹に恋をする』の方がジャニーズの松本潤と共演したためか話題になっていたが、本作の方が映画の完成度も榮倉の演技も遥かに上だ。
しかし、本作で印象的だったのは、もう一人の主役、白田の方である。理解者を得た喜び、不安、喪失感、それらを経て、彼女の口から「詩」が零れ出す夜の場面は、同じ様に創作に手を染め、似た経験もしてきた自分が最も共感できた最大の山場だった。苦しみ傷ついて、だからこそ、創作の「天使」は舞い降りる。
実際に林直次郎が歌う主題歌も効果的で、CDも買ってしまった。本作のDVDも是非買いたい。

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July 28, 2018

めぐみ-引き裂かれた家族の30年

1977年、いつものように学校へ出かけた当時13歳の横田めぐみが忽然と姿を消した。両親は娘を探し続け、遂に北朝鮮拉致問題に辿り着く。
クリス・シェリダンとパティ・キム夫妻の監督が、北朝鮮拉致問題を採り上げたドキュメンタリー。
思い入れの強さが感じられる映画だ。そこに共感を覚える観客は感動するだろうが、以前から横田夫妻が生理的に苦手な自分は、打楽器中心の音楽の多用、めぐみ氏や家族が美人や善人なことが何度も言及されること、家族会が自民党前で拡声器を使って「バカヤロー」と叫んだりすること、北朝鮮と交渉する小泉総理を増元氏が「プライドがない」と非難すること、それらが共感を妨げてしまう。地村保志氏と両親のエピソードの方が感動した。
もっと淡々と描かないと、映画としては少し鬱陶しく感じられる。拉致問題を知らない外国向けの広報映画としてはいいが、純粋なドキュメンタリー映画としては良い出来ではなかった。
念のため言っておくが、自分は拉致問題を放置しろと言っているのではない。北朝鮮の非道は非難されるべきで、この問題を軽視してはいけないのは当然だ。ただ、だからと言って、兵士を拉致されたイスラエルがレバノンを爆撃したように、日本が北朝鮮を攻撃するわけにはいかない。少し頭を冷やした議論が必要だと自分は思う。

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June 26, 2017

残像

著名な前衛画家ストゥシェミンスキ(ボグスワフ・リンダ)は、ソ連の影響下に置かれたポーランドで政府の方針に反発したため、様々な迫害に晒されて厳しい境遇に追い込まれていく。
巨匠アンジェイ・ワイダ監督が、実在の芸術家を題材として、死の直前に完成させた作品。
映画館で観ている間、ほぼずっと苦しくて、観終わった後も、その苦しさが内臓と頭脳に伸し掛かったまま、その晩、寝るまでストゥシェミンスキの生き方の事ばかり考えてしまった。こう書くと単なる嫌な映画に思えるが、そうではない。久しぶりに観た素晴らしい映画だ。信念を貫く凄まじさと悲哀は、この物語だけの問題ではない。多くの人々は主人公に同情するだろうが、現実世界では彼のような人を追い詰めている事に気付かない。自分もまた。果たして、自分は信念を貫けるだろうか、そんな人の味方になれるだろうか。そんな事を考えさせられた。
本作はエンターテイメントとは程遠い。ワクワクする楽しさ、心温まる感動、観終わった後の快感を求める人は絶対に観ない方がいい。だが、生き方や社会の在り様に関心がある人にとっては、大いに意味のある映画だ。
ところで、主人公の娘ニカ(ブロニスワヴァ・ザマホフスカ)が、観ていて、とても切なかった。その切なさと親子の関係を淡々と描いてみせるところが、単なる反骨映画に終わらせないワイダ監督の巨匠たる所以なのだろう。

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January 14, 2017

The NET 網に囚われた男

北朝鮮の漁師(リュ・スンボム)は船が韓国側に流され、韓国警察に拘束された。そこから続く過酷な日々。
韓国の鬼才、キム・ギドク監督の最新作。
2004年ベルリン映画祭銀熊賞の『サマリア』などを以前観てギドク・ファンになった自分だが、最近、彼の作品を観ていなかった。今回、久しぶりに観たギドク作は、やはりギドクだ。ストーリー展開の重苦しさ、暴力と肉体の表現の生々しさは変わらない。韓国側の良心的な捜査官を演じる二枚目俳優、イ・ウォングンがいても観客の心は休まらず、むしろ、その暖かい光が尚一層、社会の惨さを際立たせる。
政府とは誰の為にあるのか。韓国と北朝鮮、両国の役人が同様の言動をする。政治的立場など関係なく等しく一人の男を翻弄する様子が滑稽で、ぞっとさせられた。体制側の彼らも人間的で、彼らなりの正義や欲望に突き動かされるからこそ主人公を不幸に陥れていく。だからこそ、理解し合えず、逃げ場がない。両国が統一される日は来るのだろうか。隣国が常にこのような際どい状況にあるのを考えると、日本は幸せな国だと思う。
教訓。逮捕されたら、余計な事は一切言わない。破れかぶれにならない。
でも、実際、主人公と同じ状況に追い込まれたら、自分も耐えられないのかもしれない。

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September 26, 2016

シン・ゴジラ

現代日本に出現したゴジラを前に、内閣官房副長官(長谷川博己)やアメリカ大統領特使(石原さとみ)らの対応を描く。『エヴァンゲリオン』の庵野秀明と『進撃の巨人』の樋口真嗣が総監督と監督を務めた話題のゴジラ映画。
様々な批評で言われている通り、災害シミュレーション的な会議映画だ。それでいて他で言われているほど硬派でもなく、半端に長谷川博己や石原さとみら主演俳優も描こうとする。そもそも怪獣映画なら、ゴジラが画面に初登場する場面には、もっと盛り上がりが欲しい。特に二度目の上陸に何の演出もなかったのは拍子抜けした。
経口投与やら何やら細かいツッコミは多くの方々が指摘しているので、ここでは省略する。
災害シミュレーションの映画にするなら、割り切って徹底的にそういう映画にした方が刺激的だった。本気でシミュレーションするなら、あんな早口で会議は進んでくれないし、準備する書類も膨大だ。あれだけ多くが避難して被害もあれば、そんな影響だけでもパニック映画になる。異色映画『大怪獣東京に現わる』のように怪獣が画面に登場しないのはやり過ぎとしても、ゴジラはテレビ映像だけで机上の会議の空転が続く方がよほど現実的だ。
ところで、本作で最も違和感があったのは石原さとみである。彼女の演技ではない。彼女を起用したことだ。アメリカ大統領特使の役なら、アメリカの俳優を使ってほしい。ゴジラ映画なら出てくれる俳優はいただろうに。

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July 16, 2016

オマールの壁

パレスチナ人青年オマール(アダム・バクリ)はイスラエル兵殺害容疑で捕らえられ、釈放と引き換えにスパイになるよう迫られる。恋人ナディア(リーム・リューバニ)や仲間達への想いに苦しむオマールの選択が、新たな事態を引き起こしていく。『パラダイス・ナウ』で知られるハニ・アブ・アサド監督による作品。
これは恋愛映画だ。一部では社会派映画と称されている本作だが、自分が感じた限りでは、パレスチナを舞台にシェークスピア的な悲恋が展開される。切ない。誰が黒幕で、真相はどこにあるか、どんな結末を迎えるか、この種の物語の常道を知っている観客なら予想するであろう通りに物事は進む。オマールとナディアが仲睦まじく語り合う場面が堪らなく純粋で美しかったからこそ、そんな展開になってほしくないのに、やはりそうなってしまう。それが切ない。誰が悪いと言い始めればきりがない。悪いと言えば誰もが悪い。
本作で自分が改めて痛感した教訓は、正にシェークスピア劇を観て思う事と同じだ。思い込みや一人の言葉だけで決断せず、きちんと裏付けを調べ、何が真実か見極めろ。人間関係も仕事も、その他諸々。
ところで、本作のヒロインであるナディア役のリーム・リューバニが、90年代のアイドル、仲根かすみにちょっと似てると思ったのは自分だけだろうか。

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June 29, 2016

二重生活

大学院生(門脇麦)は実存哲学の修士論文を書く為の研究方法として「尾行」を教授(リリー・フランキー)から提案され、近所の男性(長谷川博己)を尾行し始める。小池真理子の小説を岸善幸監督が映画化した作品。
題材は興味深く、主人公演じる門脇の演技も上手いのに、それらを十分に活かしきれていないようで少し残念に感じられた。「現代日本における実存」という小難しい研究課題を掲げながら、結局のところ、不倫絡みの騒動に巻き込まれる程度に終わってしまっている。真面目な院生に妙な事をやらせながら教授に罪の意識がまるでなかったり、全体的に人物設定に多少疑問も感じられた。安っぽい修羅場や濡れ場をもっと抑えて、じっくり人間を描く本当に哲学的な撮り方をすれば結構刺激的な作品になる可能性はあっただけに勿体ない。ただ、そんな映画にすれば、恐らく商業的には失敗するだろうから、こうなったのかもしれない。
本作では、主人公が初めて尾行した男性がいきなり刺激的な場面を見せるので分かりやすい展開になったが、実際に街を歩く人を尾行してもそんな場面に出会う事は稀だろう。自分の日々の生活の単調さを思うと、主人公が自分を尾行したら、果たしてどんな論文を書くのか読んでみたい気がする。あまりの刺激のなさに尾行を止めてしまうか・・・なにはともあれ、門脇麦の次回作に期待したい。

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