October 22, 2005

走り出せクローバー(05/10/08)

寂れた町に建つ既に営業を止めたホテルでは、ホテルの主であるカナコ(杉山薫)の迷惑顔も気にせず、歌手志望のサナエ(にたばるさなえ)とタクヤ(堺沢隆史)が、リョウタ(遠藤良太)のピアノ伴奏で練習していた。そんな町に停まる筈のない列車が故障で停まり、乗客達がホテルへやって来る。その中には、かつてカナコ(杉山薫)と別れて町を出ていった元恋人、旅するギター弾きのケンジ(眞鍋卓嗣)がいた。
ナイロン100℃の大山鎬則が主宰するシグナルズの第3回公演。
小さな世界に静かに安住するか、リスクを覚悟してでも外の世界に飛び出すか、そこに迷う主人公カナコの姿に、自分を重ねてしまい、結構、考えさせられた。しがないサラリーマンになって約10年が経ち、特段の失敗はないものの、このままでいいのか思い悩む今日この頃、信頼してきた旧友に「君はリスクを気にしすぎてる」と言われていたからだ。しかし、無鉄砲に突き進むだけでも、やはり何もできない。そこの掘り下げが、本作では半端だったのが残念だった。観た限りでは、まるで町から出ていく事や前に突き進むだけが正しい答えかの様な作りに思える。果たして、本当にそうなのか。田舎を捨てて都会に出る事と同じくらい、都会に出ずに田舎で生き抜く事も立派な選択だと思う。バランスを取る為にも、終始、町で静かにピアノを弾き続けるリョウタの想いを、もう少し描いても良かった気がする。
また、登場人物が多すぎた。「意味なく勃起するんです」を連発して笑いを取った車掌は単発で見れば面白いが、結局、その後の扱いが尻切れに終わって意味不明だし、無賃乗車の貧乏兄弟も余計に思える。一方、ケンジに惚れてカナコに嫉妬する女子高生は、リスクを恐れずに考えなく突き進む象徴として、本作の人間達における一つの要点になっていた。放火をして逃亡中の女性二人組の腐れ縁とも言うべき関係は中々に深く、あれだけでも一本の芝居になりそうだ。
本作は音楽を演奏する場面が多い。出演者の眞鍋卓嗣と遠藤良太の自作曲だそうで、これが悪くない。サントラが欲しいくらいに気に入った。ただ、設定上、下手なサナエとタクヤの歌は除くが。
前回の第2回公演『ミッシェル・ドント・ワナ・クライ』が気に入って、今回も観に来た。思ったより笑える場面の少ない真剣味の強い芝居だったが、変わらずに苦しみにあがく人々を描いている脚本は好みだ。いずれ第4回公演があれば、また観に行きたい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)